全6回にわたり、住宅ローンの固定・変動選択と、繰り上げ返済・差額投資の判断基準を数字で検証してきた。最終回では、シリーズ冒頭で置いた4つの意見を、ここまでの試算を踏まえて修正しておく。
4つの意見のアップデート
①「住宅ローンは変動」
現在の金利差(約2.2%ポイント)を前提にすればおおむね妥当。ただし絶対ではなく、日銀の想定を超えるインフレ再燃で金利が3%台まで急騰すれば、差はわずか339万円まで縮み、それ以上上がれば逆転しうる、という条件つきの結論だった(第2回参照)。
②「固定との差額をTOPIXで運用」
方向性としては合理的。ただし一括ではなく積立で行うこと、生活防衛資金を確保したうえで行うこと、住宅ローン控除との兼ね合いを踏まえることが前提条件になる(第3回・第4回参照)。
③「繰り上げ返済するよりTOPIX」
通常の市場環境では妥当。ただし金利急騰と市場低迷が重なる最悪シナリオでは、繰り上げ返済(確実な節約)の方が投資(不確実なリターン)を上回ることがある。「保証された利回り」と「期待値の高い不確実な利回り」を同列に比較していたことは、意識しておいたほうがよい(第3回参照)。
④「金利上昇=物価上昇、TOPIXはそれ以上に上がるか」
長期ではyes寄り、短中期ではno寄り。一つの答えに決めず、時間軸で場合分けして考えるべき論点だった(第5回参照)。
実践チェックリスト
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月〜1年分)を先に確保してから、差額投資を始めているか
- 差額はスポットではなく、毎月の積立として投資に回しているか
- 住宅ローン控除の期間・金額を把握し、控除期間中の繰り上げ返済は慎重に判断しているか
- 5年ルール・125%ルールの内側で、未払利息が発生していないか年1回は確認しているか
- 完済間際・資金を使う直前の数年は、暴落が来ても困らないよう資産配分を見直す想定があるか
- 「変動一択」ではなく、金利が想定を超えて上昇した場合に固定への借り換えを検討する基準を決めているか
まとめ
「住宅ローンは変動で借り、固定との差額をTOPIXで運用する」という戦略は、方向性としては妥当だが、無条件の必勝法ではない。効く条件(緩やかな利上げ、市場の順調な成長、生活防衛資金の確保)と、効かないケース(急速な利上げと市場低迷の複合、完済間際の暴落)の両方を理解したうえで選択することが、この戦略を活かす鍵になる。
※ 本シリーズの試算はすべて借入4,000万円・35年・元利均等返済というモデルケースに基づく仮定であり、個別の借入条件・家計状況・実際の金融機関の商品性(5年ルール・125%ルールの有無、団信条件等)によって結論は変わりうる。TOPIXを含む株式投資は元本が保証されず、将来の金利・相場動向を保証するものでもない。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言・特定商品の推奨を意図するものではない。
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